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ガラス器具を安全に使用するために

ガラスは化学的安定性、耐熱性、透明性に優れた材質ですが、脆く壊れ易い性質があります。取り扱いには十分ご注意頂き、切傷・火傷をなさらぬようお願い申し上げます。
1. 使用前に点検しキズ・カケの有る物は使用しないで下さい。
2. 各々の使用目的に合った製品をご使用下さい。
加圧・減圧に使用できる製品は限られています。急激な加熱・冷却には適さない製品があります。
3. 落としたり、衝撃や曲げの力を与えないで下さい。
4. 局部に力や熱を加えないで下さい。
5.ガラスの破損によって、内容液を浴びて火傷をしたり、ガラス片・破断面により負傷されぬように対策をお取り下さい。
6. 理化学器具を用いて、飲食しないで下さい。
7. 実験中は、安全メガネをご使用下さい。


1.加熱する時
(1)ガラス器具は、直接火にかけたり局所加熱すると破損することがあります。例えば、ガスバーナーを使用される場合は、金網などを使用して均一に加熱して下さい。電熱ヒーターは、コイルにカバーをしてご使用下さい。
IWAKITE-32ガラス製品は、510℃以上に加熱されると、内部に歪みが生じて破損しやすくなりますのでご注意下さい。
(2)加熱中の容器を上から覗くのは、おやめ下さい。急激な反応があった場合、内容物がふき出す恐れがあります。
(3)加熱したガラス器具をぬれたものや、冷たいものの上に置いたり、冷却したガラス器具を加熱したものの上に置くことは避けて下さい。IWAKITE-32ガラスは耐熱性には優れていますが、急激な温度変化を与えることは破損の原因となりますので避けて下さい。
(4)火傷をしないために加熱したガラス器具を熱源からおろす時は必ず耐熱手袋やトングなどの器具を使用して下さい。
(5)5L以上のビーカー・フラスコ類・肉厚製品・PVCコート製品・ビン類は加熱に用いないで下さい。破損する場合があります。


2.減圧する場合
(1)減圧用にデザインされたガラス器具は、減圧用デシケーター、濾過器、減圧蒸留用器具など一部の製品だけです。濾過フラスコ、ナス型フラスコ以外のフラスコ製品は減圧用に設計されていません。なお、あえてその他のガラス器具で減圧される場合は、安全に十分配慮してご使用下さい。
(2)キズがあるガラス器具は、キズのないものと比較して非常に強度が下がります。キズや欠けがあるものは使用しないで下さい。


3.加圧する場合
加圧して使用する様にデザインされた器具はありません。もし実験上、加圧することが避けられない場合にはキズの無いガラス製品で肉厚・形状を検討の上、伴せて防護スクリーンなどを必ず使用して下さい。


4.その他の取扱上の注意
(1)中身の入ったビーカーやフラスコを持つときは底や側部を持って下さい。ビーカーのリム部やフラスコの首部をつかんで持ち上げたり、振ったりすると破損することがあります。
(2)ガラス器具は加熱された強アルカリや熱リン酸、フッ化水素酸に侵されますのでご注意下さい。
(3)ガラスをクランプで固定する場合は破損防止のため、金属とガラスが直接触れないように注意して下さい。また、クランプは過度に締めつけないで下さい。
(4)メスシリンダーの中で、濃硫酸を希釈しないで下さい。口径が小さいため、突沸によって破損の恐れがあります。
(5)溶液の撹拌には金属製などガラスを傷つけるような器具のご使用は避けて下さい。
(6)冷却器のサイドアームなど、ガラス管に接続したゴム管や、ゴム栓をはずす際は、無理な力を加えないで下さい。もし、取れにくい場合はナイフで切り取って下さい。その際ゴムは切りにくいので手袋などで手を保護するなど十分ご注意下さい。

(7)ガラス管にゴム管や、ゴム栓を取り付ける時は、手を保護するために手袋や、タオルを使用して下さい。ガラス管とゴム栓またはゴム管の穴部を水でぬらし、ゆっくり押し込んで下さい。もし、うまく取り付けられず、危険を感じる場合は、ゴム栓・ゴム管の差込口の内壁にオイルやグリセリンを塗布するか、穴径を大きくしてやり直して下さい。
(8)端部が切断したままの状態のガラス管にゴム管を接続することは危険です。必ず端部を口焼きして下さい。
(9)洗浄の際、研磨材入りスポンジ・金属たわし・クレンザーなどを使用すると破損の原因になります。
(10)手洗浄の際、力を入れたひねり洗いにより、破損する場合があります。手袋・柄付スポンジなどをご使用下さい。
(11)液中のガラスは見え難く、思わぬケガをする場合がありますので、液中から取り出す際は手袋をご使用下さい。
(12)加熱や冷却により内容物が固体⇔液体・気体に相変化する場合、体積の変化により圧力が上昇してガラス器具が破損する場合があります。各々の状況にあった安全対策をお取り下さい。
(13)ネジキャップを使用した製品は満水で使用しないで下さい。周囲温度の変動による体積変化で過剰な内圧が掛かり、破損する事があります。


5.摺り合わせのある器具を取り扱う場合
(1)摺り合わせのある器具を保管する場合、摺り合わせ部に残留物がないように充分に洗浄した上、紙片をはさんでおくと摺り合わせ部が固着することがありません。
(2)もし摺り合わせ部が外れなくなった場合は、以下の方法を用いて外して下さい。その際、決して無理な力を加えないで下さい。

a. 摺り合わせオス部を注意深く固定する。
b. 回しながら摺り合わせメス部のフランジ部を木の棒などでそっとたたく。
c. 摺り合わせメス部のみをブンゼンバーナーの弱い炎で回しながら15~20秒加熱する。
d.そっとねじって引っぱる。


6.ガラス製品をオートクレーブする場合
(1)使用前にガラス製品に傷・カケのないことを確認する。
(2)オートクレーブするときは、キャップを外すかキャップを載せる程度まで完全に緩めてアルミ箔で密閉されないよう固定する。
(3)オートクレーブの側壁・底面の部分(金属)に直接ビンが触れないようにする。
(4)オートクレーブから取り出すときは、常温まで下げてから取り出す。
(5)多量の水をオートクレーブしたとき、水の攪拌はビンを水浴しながら行う。
(6)オートクレーブは、急激に温度を下げない(強制排気など)。
(7)パッキンを貼りつけているキャップ類は、温度変化や劣化により繰返しのオートクレーブでパッキンがはがれる事があります。新しいキャップに交換頂くか所定の接着剤を使用して貼り直してご使用下さい。
(8)破損、やけどに備え安全メガネ、手袋、保護具を着用下さい。


7.滅菌法について
ガラス容器の滅菌法には、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、乾熱滅菌が主に用いられます。高圧蒸気滅菌は、培地の滅菌など、内容物や付属品(キャップ)が熱にあまり強くない場合に用い、内容物の滅菌を安全にするためには、フタをゆるめておくことが必要です。通常はオートクレーブを用い、121℃ 15~30分の条件で行います。乾熱滅菌は、ガラス、金属の滅菌に用います(プラスチック製品は、その耐熱性に注意して下さい)。通常は、乾熱滅菌器を用い、160~170℃ 2~4時間、もしくは、180~200℃ 0.5~1時間(薬局方による)の条件で行います。


8.発熱性物質(pyrogen)の除去条件
注射液などでは、各種の細菌、カビ、ウィルスが産生する発熱性物質(pyrogen、体内に入って発熱をおこす物質の総称)の汚染が問題になります。通常、これらの物質は、メンブレンフィルターの通過性も高く、通常の滅菌法では、除去できません。ガラス容器の発熱性物質を除去(パイロジェンフリー)するためには、250℃ 30分以上の乾熱処理が必要です(日本薬局方による)。


9.洗浄剤について

ガラス器具の洗浄剤は、洗浄剤成分としてクロム酸、硫酸混液の使用が困難になったため、付着したタンパクなどの有機物を除去できるようにpHを高くした品種(強アルカリ)も数多く市販されいてます。ガラスは一般的に酸に強くアルカリに弱い性質を示すために市販の洗浄剤の中にはガラス表面を白濁させたり白色マークを脱落させてしまうものもあります。弊社で試験した結果、ガラスの洗浄に適した洗剤の例を下に記します。

1.IWAKITE-32製品に適した洗浄剤の一例(白濁などが発生しにくい洗浄剤)
(1)スキャット20X-N(第一クリーンケミカル)
(2)エキストランMA02(メルク・ジャパン)
AP21、22(メルク・ジャパン)
(3)CLEAN99-L100(クリーンケミカル)
CLEAN99-NL(クリーンケミカル)
(4)コンタミノン(和光純薬)

2.pH値と白濁との関係
(1)洗浄剤のpH値は範囲が広く、品種によりpH2~12.5となっています。
(2)pH7以下の品種は白濁の発生はありません。
(3)約50℃で洗浄した場合、pH10~12.5の品種の一部に白濁の発生があり、pH10以下の品種に白濁の発生はありません。
(4)煮沸洗浄した場合、pH8以上のほとんどの品種は白濁を発生します。

3.洗浄時に留意して頂きたい事項
(1)IWAKITE-32製品の表面を白濁させないためには、洗浄液の温度をできるだけ、洗剤メーカーが指定した温度(一般には50℃前後)で使用して下さい。
(2)ガラス製品の使用後、オートクレーブなどで滅菌してから洗浄する場合、汚れが固着し洗浄能率が低下することがあります。そこで洗浄を早めるため加温などが行われておりますが、これはガラス表面の白濁を早める原因となります。洗浄剤の多くはアルカリ性を示し、ガラスは高温のアルカリに弱いためです。


4.IWAKITE-32製品の簡便洗浄剤について

(1)一般の簡便洗浄剤として中性洗剤が使われておりますが、脂肪類の洗浄能力からみれば「洗濯ソーダ(Na2CO3・10H2O)」が適しております。
(2)ガラス器具の洗浄に研磨剤入りスポンジ・金属たわし・クレンザーを使うことは、ガラス表面にキズをつけることになり、器具の寿命を短くしますので、お薦めできません。


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